2020/4/28
知らない街で1時間と30分、徘徊という名の散歩。
どうしてそういう経緯に至ったのかははっきり申し上げませんが、まあとにかくひたすら歩いておりました。
まず目につくのは廃墟のような保育園や、女子大生の使う背嚢を背負ったオジさん。
駅前に広がる商店街は意外にも感心する程大きくて、四方八方ころころと移動していました。
青果店、銭湯、精肉店、珍しいものでは店先に壊れた玩具の転がるたい焼き屋の残骸。
まるで昭和を歩いているようでワクワク、うふふと手負いの身であることも忘れ、有頂天外に歩み続けます。
一周二周と回るうちに、ふと空腹に気が付きました。
初めは喫茶店にでも入ろうかしらと短パン姿でふらふら歩いてみたのですが、流行病の所為でどこも空いていない様子。
やっと見つけた喫茶店には店先に出しゃばる禁煙護符。
心のうちにて「しゃーんなろー!!」と咆吼し、途方に暮れてとぼとぼ進む私は、敗戦国の歩兵はこう独りごちました。
ハハハ、もはや降参だ。潔く國に帰りましょ。
瞬間、目の前に煌きたるは、一軒の古いお蕎麦屋さん。
パパパ!と私は “と金” へと成ってしまいました。
気色ばんで店に参上申し上げると暖簾の下に一つの注意書きを発見。
むむむ?こはなんぞや。
ぬっと顔を近づけてみると
「喫煙可能店」
なんと!飯も食えてスモーキングもできる飲食店があるだなんて!
なんて美しい言葉なのかしら、と感涙に咽び、私は入場致しました。
中に入ると迎えてくれたのは捻り鉢巻姿の親父と女将さん。
真っ赤なジャケットを着た私はうぐいす色した(恐らく)偽の聚楽壁に場違いに映ります。
愛想満点スマイル0円の接客では決してなかったですが、ヘンテコな格好をした私に普通に接してくれました。
「えっと...たぬきそば」
何故豊富なお品書きの中からたぬきそばなんて選んだのか、それについてはまた今度お話致しましょ。